「ETFを長期保有すると価格が下がってしまう?」「長期保有しても大丈夫なETFはどれ?」「長期保有してはいけないETFはどれ?」など、ETFの長期保有で不安になっていませんか?
TOPIXやS&P500指数、NASDAQ100指数といった指数(インデックス)に連動する一般的なETFは、長期保有するとトータルリターンがプラスになりやすくなっています。
一方で、レバレッジ型ETFやインバース型ETF、ダブルインバース型ETFなどは短期投資向けとなっており、商品先物ETFや為替ヘッジありのETFの長期保有には注意が必要です。
この記事では、インデックス型のETFは長期保有するとトータルリターンプラスになりやすい理由について解説した上で、長期保有すると価格が下がってしまうリスクがあるETFについて紹介しています。
ETFの多くは長期保有すると価格が上がりやすい
ETFの大半の銘柄は、長期保有すると価格が上がりやすい傾向にあります。
これは、ETFのほとんどの銘柄について、月足チャートを見て実際に自分の目で確かめてみてもらえればと思います。
ETFの多くの銘柄で、長期保有すると価格が上がりやすい理由としては、多くのETFは、指数(インデックス)に連動して数百銘柄に分散投資されているためです。
インデックス投資が長期保有に強い理由としては、指数(インデックス)の算出方法にあります。
TOPIXやS&P500指数、NASDAQ100指数などは、時価総額加重平均型となっており、時価総額が大きい成長株の構成比率が大きくなるようになっています。
現に、S&P500指数の構成銘柄上位はGAFAM(Google、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoft)やNVIDIA、Teslaといった世界時価総額ランキングトップの銘柄が中心です。
つまり、時価総額加重平均型のインデックスは、産業構造の変化に対応して、自動的に構成銘柄の入れ替えが行われているということです。
日経平均株価やダウ平均株価は株価平均型であり時価総額加重平均型ではありませんが、これらの指数も産業構造の変化に対応して定期的に銘柄入れ替えが行われています。
S&P500指数は言うまでもなく、実はバブル期に最高値を付けた日経平均株価であっても、長期・積立・分散投資をしていれば、配当金・分配金を含めてトータルリターンはプラスになっています。
「日経平均株価に長期投資していたら、マイナスになっていた」と思っていないでしょうか?
それは、日経平均株価に、1989年にだけ集中投資していた場合で考えてしまうからです。
仮に、日経平均株価に毎月や3ヶ月末ごとに分散投資していたら、時間分散されるため、分配金も含めるとトータルリターンはプラスとなっています。
※2023年11月17日時点の日経平均株価は33,585円となっており、最高値を付けた1989年から1990年以外を除いて、ほぼ全ての年で投資していた分がプラスとなっています。
仮に、過去30年以上に渡って、日経平均株価に長期・積立・分散投資していたら、バブル期の1989年後半から1990年前半の影響は30分の1以下に薄まります。
バブル期に最高値を付けた日経平均株価であっても、ETFで長期・積立・分散投資していれば、トータルリターンはプラスになっていました。
このように、ETFは長期保有すると価格が上がっていく期待が大きく、長期・積立・分散投資をして時間を味方に付けることによって、非常に高い確率でトータルリターンはプラスとなります。
長期保有すると価格が下がってしまうETFとは?
日本株ETFや米国株ETF、世界株ETFなど、指数に連動するインデックス型のETFは長期保有すると価格が上がっていくことが期待されます。
一方で、全てのETFが必ずしも長期保有すると価格が上がっていくわけではありません。
次のETFには注意が必要です。
- レバレッジ型ETF
- インバース型ETF
- ダブルインバース型ETF
- 商品先物ETF
また、米国FRBが利上げ路線に舵を切り、日米金利差が広がった2022年以降には、米国株ETFや米国債券ETFであっても、「為替ヘッジあり」の銘柄については為替ヘッジコストが引かれるため注意が必要となっています。
長期保有すると価格が下がってしまうETFについて見ていきましょう。
レバレッジ型ETF
レバレッジ型ETFとは、日経平均株価やTOPIX、JPX日経インデックス400といった指数の変動率に対して2倍の値動きをするレバレッジ指数に連動するETFです。
レバレッジ型ETFは、大きな値動きをするため、デイトレードやスイングトレードといった短期投資向けのETFとなっています。
一方、レバレッジ型ETFは分配金が出ず、信託報酬も高いため、長期投資には向いていません。
また、レバレッジ型ETFは正確には「指数の前営業日の2倍の値動き」となるように設定されているため、2営業日以上離れた日と比較すると、複利効果によって2倍前後にぶれてくるため完全な2倍の値動きにはならないことに注意が必要です。
特に、「指数の前営業日の2倍の値動き」になるというレバレッジ型ETFの特性があるため、指数が上昇と下落を交互に繰り返す場合には、レバレッジ指数は逓減していってしまいます。
※例えば、TOPIXが+5%上昇→-10%下落→+5%上昇という値動きとなった場合、TOPIXは+5%-10%+5%=100%となって元の値に戻りますが、レバレッジ型ETFは2倍の複利効果となるため、10%×(-20%)×10%=96.8%と逓減してしまいます。
※レバレッジ型ETFに長期投資するなら、分配金が出る普通のETFに2倍投資すれば、分配金を貰うこともできます。
ただ、レバレッジ型ETFも、結局はインデックスであるTOPIXや日経平均株価に連動するため、長期的には上がっていく傾向があります。
現に、日経平均株価に連動する代表的なレバレッジ型ETFである【1570】NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信は、2023年11月時点の直近5年間のトータルリターンは、分配金を含めた日経平均株価連動型ETFを上回っている状況です。
ただ、これは、あくまでこういうこともあるという事例が起きているに過ぎません。
一般論として、レバレッジ型ETFは長期的に逓減し、信託報酬も高く、分配金も出ないため、長期投資におすすめできないことには変わりありません。
ETFに長期投資するなら、レバレッジ型ETFではなく、信託報酬が低く、分配金が出るETFに投資することがセオリーです。
インバース型ETF
インバース型ETFは、日経平均株価やTOPIX、JPX日経インデックス400といった代表的な指数の変動率に対して逆(-1倍)の値動きをするインバース指数に連動するETFです。
インバース型ETFは、相場の下落局面において、デイトレードやスイングトレードといった短期投資に適するETFとなっています。
インバース型ETFに分配金は出ず、信託報酬も高くなっています。
ETFによるインデックス投資は市場全体の長期的な成長を享受できることがメリットですが、インバース型ETFではこのメリットを逆に受けてしまうため、長期投資には全く向きません。
インバース型ETFは、長期保有すると価格が明らかに下がっていく傾向があります。
次のチャートは、日経平均株価のインバース型ETF【1571】NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信の月足チャートです。
ダブルインバース型ETF
ダブルインバース型ETFは、日経平均株価やTOPIXといった指数の変動率に対して逆かつ倍(-2倍)の値動きをするダブルインバース指数に連動するETFです。
ダブルインバース型ETFは、相場の逆の値動きをするインバース型ETFと、相場の倍の値動きをするレバレッジ型ETFを掛け合わせたETFとなっています。
ダブルインバース型ETFは、相場の下落局面において、デイトレードやスイングトレードといった短期投資に適するETFです。
ダブルインバース型ETFには分配金は出ず、信託報酬も高めです。
ダブルインバース型ETFは、レバレッジ型ETFの長期逓減効果と、インバース型ETFによる長期的な価格下落効果が加わるため、長期投資には絶望的に向きません。
次のチャートは、日経平均株価のダブルインバース型ETF【1357】NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信の月足チャートです。
レバレッジ型ETFを長期保有するという案には、「そうじゃなくて、信託報酬が低く、分配金がちゃんと出るETFに投資しよう」というアドバイスになります。
インバース型ETFやダブルインバース型ETFへの長期保有については、「絶対にやめておいた方がいいですよ」というアドバイスになります。
なお、ダブルインバース型ETFは、長期保有すると価格が下がってしまうため、「長期で空売りすればいいのではないか?」と思うかもしれません。
確かに、勝率自体は高くなることが期待できますが、暴落相場が来た場合には踏み上げられてしまうため、そう簡単な話ではありません。
上図のETFも、コロナショック時には2020年2月の安値846円から2020年3月には一時1,730円まで急騰しています。
もしも総資金の100%以上で空売りをしていれば、この踏み上げで一発退場になってしまいます。
商品先物ETF
商品先物ETFも、必ずしも長期保有すると価格が上がっていくとは言い切れません。
商品先物ETFは、ドル建て資産となっており、分配金が一切出ないことが特徴です。
分配金が出ないため、完全に商品価格と連動することになります。
商品先物ETFとして代表的な銘柄は、金(ゴールド)連動型ETFと原油価格連動型ETFです。
金(ゴールド)価格は上がっており、代表的な金(ゴールド)ETF【1540】純金上場信託(現物国内保管型)などは長期的に上昇しています。
一方、原油価格は、コロナショックで暴落した2020年以降は、脱炭素やウクライナ情勢で大きく上がっていますが、より長期で見ると下がっています(下図は【1671】WTI原油価格連動型上場投信)。
金(ゴールド)と原油以外の商品先物ETFでは、パラジウムは非常に大きな上昇となりました(下図は、代表的なパラジウムETF【1543】純パラジウム上場信託(現物国内保管型))。
ただ、プラチナなど、横ばいや下落となっている商品先物ETFも少なくありません(下図は代表的なプラチナETF【1541】純プラチナ上場信託(現物国内保管型))。
天然ガスETFである【1689】WisdomTree 天然ガス上場投資信託は、長らくデイトレーダーのおもちゃにされています。
為替ヘッジありのETF
2022年以降は、日米金利差の拡大などを受けて、円安ドル高が大きく進みましたが、ETF投資においても金利について意識しなければいけなくなってきました。
特に大きな影響となっているのが、為替ヘッジありの銘柄です。
為替ヘッジありの銘柄については、米国株ETFであっても、長期的に注意が必要な状況となってきています。
為替ヘッジありの銘柄には、為替ヘッジコストが発生するためです。
例えば、米国株ETFの為替ヘッジありの銘柄の場合、米国株ETFを買ってかつ、円を買ってドルを売る為替予約注文を同時にしており、後者で発生するスワップポイントを支払わなければいけなくなるためです。
米国株ETFや米国債券ETFなどのドル建て資産について、日本円で為替ヘッジする場合の為替ヘッジコストは、“米国短期金利-日本短期金利”となり、2023年11月時点では約5%となっています。
つまり、米国FRBが利上げ路線に舵を切り、日米金利差が広がった2022年以降は、為替ヘッジありの銘柄には、年間-5%程度の下落圧力が加わっていることを意味します。
NASDAQ100指数連動型の為替ヘッジあり【2845】NEXT FUNDS NASDAQ-100(為替ヘッジあり)連動型上場投信であっても、次の通りです。
同期間(2022年3月以降)について、オリジナルのNASDAQ100指数は次のようになっています。
オリジナルのNASDAQ100指数は、2022年3月の水準をわずかに上回っている一方で、NASDAQ100指数連動型の為替ヘッジありETFは下回っており、この差は為替ヘッジコストの差で説明できます。
為替ヘッジコストは実質的な手数料のようなもののため、株価が戻ったとしても、この分のコストは戻りません。
日米金利差が大きくなっている以上、インデックス投資においては、2022年以降は為替ヘッジありの銘柄への投資はおすすめできなくなっています。
逆に、日本の短期金利が米国短期金利より大きくなれば、為替ヘッジありの銘柄には為替ヘッジプレミアムが発生しますが、日本の財政状況からすると絶対にあり得ません。
為替ヘッジコストに関して、より詳しくは次の記事を参照ください。
まとめ
この記事では、インデックス型のETFは長期保有するとトータルリターンプラスになりやすい理由について解説した上で、長期保有すると価格が下がってしまうリスクがあるETFについて紹介してきました。
インデックスに連動する日本株ETFや米国株ETF、世界株ETFなどは、多くの銘柄に分散投資されており、時価総額加重平均型などで産業構造の変化に対応しているため、長期保有するとトータルリターンはプラスになりやすくなっています。
一方で、レバレッジ型ETFやインバース型ETF、ダブルインバース型ETFなどは短期投資向けとなっており、商品先物ETFや為替ヘッジありの銘柄の長期保有には注意が必要です。
レバレッジ型ETFは、インデックスに連動するため長期保有してもプラスになりやすいですが、長期的に逓減する性質があり、信託報酬が高く、分配金が出ないため、長期保有にはおすすめできません。
インバース型ETFは、インデックスの長期的な成長を逆に受けてしまいます。
ダブルインバース型ETFに至っては、かなりの高確率で長期保有すると価格が下がってしまうため注意が必要です(かといって空売りしても、暴落相場時に踏み上げられてしまうリスクがあります)。
商品先物ETFは、商品価格に連動するだけで分配金が出ないため、金(ゴールド)などは長期的に上がっていますが、長期的に厳しい動きとなっている銘柄も少なくありません。
米国FRBが利上げ路線に舵を切って日米金利差が拡大した2022年以降は、米国株ETFであっても、為替ヘッジありの銘柄には為替ヘッジコストが掛かるようになってきたため注意が必要です。
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